須賀川特撮アーカイブセンター

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【収蔵資料紹介③】島倉二千六氏の背景画

【収蔵資料紹介③】島倉二千六氏の背景画
須賀川特撮アーカイブセンターのホールや2階ミニチュアセットの壁を彩る背景画。これらを描いた島倉二千六(ふちむ)氏は、円谷英二監督の時代から現在まで現役で活躍する背景画家です。中でも雲を表現する技術の高さから「雲の神様」としても知られています。今回は島倉氏の作品とその仕事に対する姿勢についてご紹介します。

1.特撮に欠かせない背景画

須賀川特撮アーカイブセンター入り口から左手に曲がると現れる吹き抜けのホールには、両壁面に背景画が並んでいます。青空から曇り空、夕焼け、さらには宇宙空間まで。これらは本物の空を写した大きな写真にも見えますが、すべて人の手で描かれています。

現在では映像の背景にCGを合成することが増えましたが、以前は人の手で描かれた背景画を用いていました。ホールで見られる資料には、板張りがしてあるパネルや、キャンバス地を使用したホリゾントがあります。背景画の使われ方には、ミニチュアセットなどの後ろに設置して撮影を行う方法や、別撮りして後から合成する方法などがありました。特に合成せずセットとともに使われるものは、撮影の際カメラで撮れる範囲全体に背景画を映す必要があるため、大きいサイズで作られました。ホールで見られる背景画は大きいものでも3×4mほどのサイズですが、屋外の巨大なプールやセットで撮影をする際には最大で11×92mほどの背景画が作られました。大きな背景画を作るときには足場に上り、屋外であれば厳しい暑さや寒さの中でも、撮影スケジュールに合わせて決められた時間内で描き上げなければなりません。しかし、背景画は撮影が終わった後も保存されることは少なく、特に布素材のものは一度描いた絵を消して新たな背景を描くこともあるため、現物が残っていないことも多く貴重な資料となっています。

ミニチュアセットを屋外で組み上げて実際の空を映しながら撮影する方法もありますが、背景画を用いると、密な撮影スケジュールの中でも天候を気にせず撮影できるというメリットがあります。特にテレビ番組として毎週放送されるような映像作品では、同じ空の背景画を使いまわすことも珍しくありません。背景画家は、使いまわしても気付かれないように、そして主役である役者やキャラクターが目立つように、「特徴がありすぎず」「リアルな」背景を描いていました。また、背景は通常、映像の画面の半分以上を占めており、映像全体の印象づくりや場面転換などでも重要な役割を持っています。自由に操作できない現実の空よりも、人の手で作られた背景のほうが映像の場面に沿った最も良い空模様を用意できるのです。

そのような背景画としてのポイントを完璧に押さえた作品を作り続ける背景画家が、島倉二千六(ふちむ)氏です。島倉氏は円谷英二監督の時代から特撮の世界で活動し、今も現役で活躍しています。

 


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